かっぱ親子秘伝! 「DM開封率アップ術」 ~キーワードは「アララララ」?!~

かっぱ親子秘伝! 「DM開封率アップ術」 ~キーワードは「アララララ」?!~ ※これはフィクションです!

かっぱ原稿タイトル

地元の小さなDM発送代行店に就職して8年目、絶体絶命の大ピンチです。

わたしの担当は、自社の宣伝DM作成です。
食品や衣料品のメーカーから小売店や外食店まで
いろいろな企業様へ宛てて「DMの効果を力説したDMをお送りしています。

「デジタルな世の中でこそ温もりあふれるDMが効果を発揮します!」
「DMで新規顧客獲得を目指しましょう!」
「リレーションDMでお客様と親密に!
「お見積もりは無料!今すぐお電話を!」

……数々の決まり文句を並べたDMで、DM制作を弊社に
依頼していただくよう営業をかけています。

しかし、決まり文句に「!」を連打しているわたし自身はというと、
まったく「!」をつけたいような気分ではありません。
DM発送代行店である自社のDMに対するレスポンス率が低迷しているのです。
いよいよ5%を割りそうだ、といううわさが社内で広まりつつあります。
これではDM発送を代行するのに全く説得力がありません。
「うちのDM、開けてもらえているのかな……」という不安から、
いよいよ「ってゆーか、届いているのかな……
というDM発送代行店としてあるまじき疑念まで湧き上がってしまったのです。

心優しい上司は、
「まいったなー!これじゃぁウチのDMをどっかの代行店に頼みたいくらいだなー!わっはっは!」と、
陽気に笑い飛ばしてくれます。
しかし、その能天気な笑い声がわたしの頭と心をさらに痛めつけます。
その上、社内中の笑い者になっているのでは、という疑心暗鬼にさいなまれ、
同僚たちと目を合わせることさえ苦痛になってきました。

最近、悪夢に襲われます。妻によると、
「官公庁からの通知と思わせるようなシンプルな封筒で。
企業向けには週明け着、家庭向けには金曜着……ブツブツブツ」という、
DMづくりの基本マニュアルを寝言でつぶやいていたらしいのです。

のんきな上司の笑い声、社内中のあざけりなどはどうでもいいのです。
ただ、仕事で成果を出したいのです。
いや、そんな個人的な欲望だけではありません。
お客様が事業縮小のために軒並みDM販促から手を引こうとしている
昨今(いや、競合他社にシフトしているという可能性も大いにありますが……)、
地元の小さなDM発送代行店である我が社は存亡の機に立たされています。
そんな危機的状況に陥っているDM発送代行店のDMレスポンス率が低迷しているとは……
このままではわたしのプライドはおろか、
妻子を抱えるわたしの生活までズタズタになりかねません。

その日も、来ないであろうレスポンスを待ちながら、
壁を背にしたデスク配置に感謝してネットサーフィンをしていました。
競合店のホームページにある
「DM作成のコツ」
「DM作成のポイント」
コンテンツをはしごしてみます。
どれもわたしが試した手法ばかりです。
空々しさを感じ、ため息を飲み込んでばかりいました。

そのとき、いつも通りわたし宛ての配送物が渡されました。
わたし宛てといっても、以前名刺交換をした企業から送られてくる企業向けDMがほとんどです。
コンピュータシステム、データベースなどの販売促進DMが多いです。
配送物に目を落としながらも、ひとつひとつ吟味しているようないないような状態のまま、
ほとんど神経を使わずにぱっぱぱっぱとゴミ箱に捨てていきます。
ところが突然、わたしの手が止まりました。

かっぱイラスト1

つい先日、初めて出席したDMに関するセミナーで名刺交換をした会社のDMでした。
名刺交換をした相手は、信じられないことにかっぱでした。
かっぱが、しかも親子でセミナーに参加していたのです。
わたしは度肝を抜かれ、自分の目を疑いました。
しかし、紛れもなくかっぱが目の前にいるのです。
どうやらかっぱの親子はDMセミナーの常連らしく、
主催者やほかの参加者は驚いた様子もなく母親と仕事の話をしたり、
子どもをあやしたりしていました。
ですから、わたしも平静を装い、ニコニコ笑顔の母親かっぱと名刺交換をしましたが、
わけがわからず動悸が激しくなり心臓が飛び出そうだったのを覚えています。
誰も信じてくれないだろうから妻子にさえ言うこともできず、
幻を見たんだと思い込むことにしていました。
その「かっぱ親子」の会社からDMが送られてきたのです。

他のDMに目を落としている時間は平均0.5秒くらいですが、
かっぱ親子のDMには5秒ほどかけました。
そして、ゴミ箱ではなく机の端に置きました。
すぐにまた他の配送物をチェックし始めてからも、このDMが気になって仕方ありません。
そこで、「かっぱ親子」のDMを開けて中身を読んでみました。
奇しくも、ちょうどその頃わたしは通勤の車内で芥川龍之介の『河童』を読んでいました。
現実逃避の手段として読書に埋没していたのです。
かっぱの世界を描くことで人間界を痛烈に批判した晩年の名作
『河童』のすばらしさに感銘を受けながらも、
『河童』が発表された年に芥川が短い生涯を閉じたことを考え、
共感とあいまったような絶望感を抱いていました。
しかし、数あるDMの中で唯一目に留まった「かっぱ親子」のDMを読み終わった時、
「かっぱ親子」こそがわたしに知恵と希望を与えてくれるような気がしたのです。
たった一通のDMが、絶望感を払拭するパワーを与えてくれました。
わたしは丸めた背をしゃんと伸ばして立ち上がり、上司のデスクへ向かいました。
そして、研修目的で「DM作成の個別相談」を受けさせてほしいと懇願し、
なんとか許可を得て即座に申し込みました。
指定された日時に、わたしはかっぱ親子の会社に向かいました。
そこにいたのは、やはりかっぱでした。
かっぱ親子は、他のスタッフ(人間)とともにDMの封入作業をしていましたが、
わたしに気づくと作業を中断し笑顔で迎えてくれました。

かっぱイラスト2 かっぱイラスト2
かっぱママ:
こんにちは!伏見様ですね!いらっしゃいませ~!ご無沙汰してます~!
すみませーん、封入作業中で散らかってまーす!
伏見:
いえ、お気遣いなく。今日はよろしくお願いします。
かっぱママ:
ささ、どうぞこちらへ。ちびかっぱちゃん、お茶よろしくね!
チビかっぱ:
はーい、ママー。

なんというゆるい雰囲気。
いや、このゆるいムードの中でキレ味鋭いDM作成個別指導が
行われると思うと身が引き締まりました。
かっぱママは、封入作業をしているうちにDMの知識が身につき、
それから独学でDMを研究し、DM発送代行店を補佐する業務に
携わるようになったことを話してくれました。
苦労はあったけれども、DM作成個別指導を受けた結果、
レスポンス率が上がったという評判が業界内で広まり、
ようやく軌道に乗ってきたとのことです。
そこへちびかっぱがお茶を持って現れました。
かっぱママは立ち上がり、わたしの手を握りました。

かっぱイラスト3

かっぱママ:
レスポンス率が上がらない、そのご苦労、お察しします。
でももう大丈夫です!
何百種類ものDMを研究したわたしたちのアドバイスで、
開封率、レスポンス率は必ず上がります!

かっぱママの手はぬるっとしているかと思ったのですが、
しっとり、という表現がふさわしいひんやりと心地よい感触でした。

チビかっぱ:
おじちゃん、大丈夫だよ!ぼくたちにまかせてね!
伏見:
どうかよろしくお願いします!
かっぱママ:
レスポンス率を上げるために、まずは開封率を上げなければいけません。
開封率を上げるOE(外封筒)の作り方を伝授します!
その名も「かっぱ親子秘伝!「開封率アップ術」キーワードは「アララララ」?!」
チビかっぱ:
「アララララ!!」
伏見:
なんですか、それは?!「アララララ?!
かっぱイラスト4

かっぱ親子はふたりで目を見合わせてイタズラっぽくフフッと笑いました。
かっぱが目の前にいる、これは幻かもしれない、でも、幻だっていいじゃないか。
わたしに知恵と希望を与えてくれるのが人間でなければいけないと誰が決めたのか。
わたしはかっぱ親子を信じよう。
かっぱ親子はわたしの決意になど全く気付いていない様子でわたしにお茶をすすめ、
自分たちはコップに入った水をジャーッと頭のお皿にかけました。
この儀式めいた水かけは、開封率が驚くほど上がる
「アララララ」スタートの合図だったのです。

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次回は第1ステップ「安心、安全、あやしくない」の「ア」!