印刷について

3.印刷方式の種類

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印刷方式(版式)には、平版印刷・凹版印刷・孔版印刷・凸版印刷の4種類があります。この4種類は、刷版インキの付く画線部と付かない非画線部がどのように作られているかなど版式の違いによって区別されています。現在は、実際の刷版を持つ4種類以外に、データから直接印刷を行う無版印刷方式も追加されています。

● 平版印刷(オフセット印刷)

#1# 印刷方法

平版印刷は代表的な印刷方式で、そのほとんどがオフセット印刷で行われています。

オフセット印刷は、水と油が反発することを利用して印刷を行っています。アルミ板で作られたPS版(凹凸のない版)が印版として使用されるのが一般的です。PS版の表面には感光材が塗布してあり、紫外線やレーザー光などで感光させて現像すると、画線部は親油性、非画線部は親水性の異なる性質を持つようになります。

印刷をするために、版にインキを塗布する時は、その前に水(湿し水)を塗布します。そうすることで、親水性の性質を持つ非画線部に水が残るので、その状態で油性インキを塗布すると非画線部はインキがはじかれ、親油性を持つ画線部にのみインキが塗布されることになります。最近では、浸し水の代わりにシリコンを使って水をはじく水なし印刷も増えています。印刷工程上の廃液を減らせるため、環境面で注目されています。

オフセット(OFF SET)とは、版胴につけたインキを1度ブランケットへ転写(OFF)して、紙に転写(SET)する間接的な印刷です。大量の印刷物を一度に印刷することができるので、枚数や部数が多い場合に適した印刷方法です。

オフセット印刷機は、印刷する用紙によって区別されていて、平判の紙に1枚1枚印刷するオフセット枚葉印刷機と、ロール状に巻き取った紙に連続して印刷するオフセット輪転印刷機の2種類があります。

#2# 特徴

版制作費が安く、多色印刷が得意なので写真やイラスト、グラデーションのあるものがキレイに仕上がり、文字もはっきりしています。

大量ロットに対応しやすく、大きなサイズの紙にも使用できます。ただし、小ロットは割高となります。

#3# 印刷用途

チラシ、パンフレット、DM、記念誌、会報や文集、伝票、封筒など

#4# 印刷原理

印刷目的分類

オフセット印刷はデータ化された原稿を一旦フィルムに出力し、それから版に焼き付けて印刷します。これにより、写真などの画像の濃淡を忠実に再現でき、カラー印刷にも適応しています。濃淡表現は、網点の大小で表され、インキの膜厚は均一です。
最近ではデータから一旦フィルムに出力せず、直接版に焼き付けるCTPが増えています。

浸し水
版材の非画像部に付けられ、印刷インキをはじく役割を持った弱酸性水のこと。

網点
写真や図版など、階調(色の濃淡)のある原稿の連続的な濃淡を印刷物で再現するために使う点の集合のこと。等間隔に並んだ点の大小で濃淡を表現する。写真の持つ豊かな階調を印刷で表現するには、その調子を網点に置き換え、網点の大小によって表現させる。(※詳細は色とカラーにて記載)

階調
濃淡の調子のことで、色調が連続的に変化する。画像が持つハイライト(明るい部分)からシャドー(暗い部分)までの濃度も階調ステップ数で表させる。システムによって段階が決まっていて、DTPで扱う階調は通常256階調、印刷用のスキャナでは1024階調以上に対応したものもあり、高品質を望む場合はこのようなシステムを利用する。

#5# その他

オフセット印刷では、PS版→ブランケット→紙へと網点を作っているインキを転写しますが、圧力で網点が延びたり、インキが滲むことがあります。網点が大きくなってしまうこのような現象をドットゲインといいます。ドットゲインの度合いで色味が大きく変化してしまうため、あらかじめドットゲインを計算に入れた網点で製版を作るなどの対応もされています。

● 凹版印刷(グラビア印刷)

#1#印刷方法

版面に凹部を作り、そこにインキを詰めて紙に転写する版式を凹版印刷といい、その代表としてグラビア印刷があります。雑誌のグラビアページなどで馴染みのある印刷方式で、写真の階調を最も忠実に再現する印刷方式です。写真などを印刷するのに適した印刷方法なのでグラビア印刷と呼ばれるようになりました。凹部にのみインキが残るので、これを紙に押し当てて転写します。版は、版胴または版胴に巻きつけるラップアラウンド版の表面を、エッジングした状態に作成します。製版方法には主なものでコンベンショナル法網グラビア法電子彫刻法の3種類があり、印刷目的によって使い分けられます。

◇ コンベンショナル法
コンベンショナルグラビア版のセル(画線部)の大きさは同じで、色の濃淡を深さの「浅い・深い」で表します。写真グラビアのような高品位な印刷に適しています。
◇ 網グラビア法
オフセット印刷と同様に、網点で階調を表現します。コンベンショナルグラビアよりも微細な濃淡が表現可能で、オフセット印刷と原版の互換性があるのもメリットの1つです。新聞の日曜版、雑誌、DMなどの印刷に適しています。
◇ 電子彫刻法
電子製版彫刻機を使用して、原稿をスキャンしたり、デジタルデータから取り出した電気記号により彫刻針・レーザー光線を利用して版面上に網点を彫刻する製法です。菓子、食品を包装するフィルム資材や袋の印刷に適しています。

【セル形状】

セル形状

エッチング
化学薬品などを用いて、腐食作用により表面を加工する技術のこと。金属や半導体の加工など広い分野で利用され、最近は化学薬品の代わりにガスを用いたドライエッチングも使用されている。

#2# 特徴

写真部分を拡大しても点描が見えにくいので、フィルムなどの印刷に向いています。微細な濃淡が表現できるため、写真画像の再現性の高さはグラビア印刷の最大の特徴と言えます。セルの大きさを変えることで密度を変化させ、色の濃淡を表現することができます。

#3# 印刷用途

軟包装材

※軟包装

レトルト食品・スナック菓子・液体などの包装に用いられるフレキシブル(柔軟)な包装パッケージのこと。

#4# 原理

印刷原理

凹版印刷では、画像の濃淡を網点ではなく、インキの量で表現します。濃くする部分には凹部を多くし、多量のインキが付着するようにします。濃度域が広いので、写真などの階調を表現するには最も適した版式です。

ドクター刃
非画線部のインキをかき取る器具。

● 孔版印刷(スクリーン印刷)

#1#印刷方法

孔版印刷は、他の印刷方法では困難な曲面印刷が可能で、プラスチック・ガラスなど幅広い素材に適用が可能です。そのため、商業美術、生活用品、工業製品の分野で幅広く使用されています。

ポリエステル・ナイロン・ステンレス等細かい糸で成り立つスクリーンメッシュをアルミ枠に貼り、インキを通過させるところと通過させないところを版として作り、その版にインキを刷りつけて、インキが通過したところが絵柄となります。印刷は手刷りか半自動式の印刷機を使用して行いますが、インキの乾燥が遅いので多色刷りや大量印刷には時間が掛かります。

#2# 特徴

濃度が高いため耐光性があり、ボリューム感があります。対応可能なインキの幅が広いので、被印刷物の形状・サイズ・柔軟性・素材を選びません。大抵はキレイに印刷されますが、プラスチックの円筒などに印刷した場合はインクが盛り上がったようになることもあります。

#3# 印刷用途

Tシャツ、文房具、銘版

#4# 原理

孔版印刷 原理

版に乗せて押しつけたインキが、通る部分と通らない部分がある版(スクリーン)を使用。「プリントゴッコ」がこの方式です。

● 凸版印刷(活版印刷、フレキソ印刷)

#1# 印刷方法

凸凹のある版の凸部分にインキを付けて、加圧しながら紙などにインキを転移して印刷する方式を凸版印刷といいます。分かりやすく言えば木版画や印鑑の原理と同じです。

これまでは鉛でできた活字を並べたものを印刷機にセットして、そこに直接インキを付けて紙に転写する活版印刷が利用されていましたが、現在では活字を鋳造するメーカーも減り、ごく限られたものにしか見られなくなりました。

変わって、フレキシブル(柔軟)な弾性のある版(樹脂とゴム版)を利用するフレキソ印刷が主流となってきました。紙に印刷する場合は水性インキとUVインキを使用します。ベタ印刷に優れていますが、網点印刷の品質が向上したため、ラベルや紙器、軟包装などの印刷にも活用され始めています。欧米ではオフセット印刷に次ぐ主流となっていて、日本でも普及し始めています。

※UVインキ
紫外線エネルギーを利用することで0.2秒という短時間で強制的に乾燥が可能なインキ。油性インキに比べて摩擦などの耐性にも優れている。熱がかかりにくいので、プラスチックなど応用基材の範囲が広い。ただし、高価で接着不良を発生しやすい。

#2# 特徴

線画や網点の輪郭が鮮明で、印刷濃度の高い力強い仕上がりになります。水性インキに対応していて、印刷ロスも少なく、小ロット印刷にも対応可能です。ただし、カラー印刷はアート紙に限られます。

#3# 印刷用途

案内状、封筒、名刺、ハガキ

#4# 原理

凸版印刷 原理

写真などの階調は、インキの濃淡で表現するのではなく、網点の大小によって表現されます。

● 無版印刷(オンデマンド印刷)

パソコンを使って作成したデジタル組版データから、ダイレクトに印刷物を作成する印刷方式のことで、ノンインパクト方式とも呼びます。小ロットの印刷物を短期間で仕上げられるのがオンデマンド印刷の特徴です。従来の印刷では、どれだけの量の印刷物でも製版・刷版・印刷機のセットが必要で、手間とコストが掛かりましたが、オンデマンド印刷は無版なのでこれらの工程が不要です。モノクロだけではなく、高品質なカラー印刷もこなすので、小ロット印刷の主流となっています。

利用分野としては、カタログ・折り込みチラシ・行見マニュアル・各行事記念印刷物・個人向けDM・カラー名刺・年賀状など様々です。

【印刷方式の種類一覧】

◇ 基本的な4大印刷方法(有版印刷)

種類 平版印刷 凹版印刷 凸版印刷 孔版印刷
版式 オフセット印刷 グラビア印刷 活版印刷
フレキソ印刷
スクリーン印刷
原理 親油性の画線部と、親水性の非画線部に明確な高低がなく、版面に水とインキを交互に与えながら印刷
基本的な印刷方法
版面のくぼみ部分にインキを与えて、被印刷物に転写する 版の凸部分にインキを付けて紙などに転写する
(木版画・印鑑と同じ原理)
インキが通過できる小孔の集合からなる画線部と、インキが通過できない非画線部からできていて、画線部の小穴からインキを押し出して印刷
特徴 間接的印刷なので、耐刷力を飛躍的に伸ばせる
鮮明
大量印刷に対応
ボリューム感あり
ニーズ幅が広い
少量印刷対応
高速印刷が可能
安価で、濃度の高い印刷ができる
少量印刷対応
幅広い素材に印刷可能
用途 新聞・ポスター・カレンダー・折り込みチラシ・書籍・印刷物 他 プラスチックフィルム・軟包装材料・建材・写真集・美術書 他 新聞・名刺・帳票・段ボール 他 ステッカー類・計器版・プリント配線・パソコン等のキーボード 他

◇ オンデマンド印刷(無版印刷)

種類 インクジェット レーザープリンタ
原理 小さなノズルから液体インキの微敵を吹き出し、紙に小さな点で画像を印刷。CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色で大抵の色が表現され、ライトシアン・ライトマゼンタ・ライトイエローなど薄いインキを加えて、さらに階調を滑らかにする傾向増。 内部のドラムと呼ばれる金属管にレーザー光をイメージの形に照射して静電気を発生させ、その磁力によってトナーを付着させ、紙に転写。トナーはその後、熱と圧力によって紙に定着し印刷が出来上がる。
特徴 適合するインキによって耐水性が異なる。一般的に染料インキは水溶性、顔料インキは耐水性がある。 網点が見えない。インキが滲まないので細かい文字まで再現可能。高熱で定着させるので、ビニール印刷、合成紙には不向き。

染料
着色用の色素で、水や油に溶ける染料を用いたインク。発色がよいため写真印刷等に利用されるが、にじみやすく耐光性も弱いのが欠点。

顔料
着色用の色素で、水や油等には溶けず、溶媒に分散されて使用される。耐光性が高いので屋外で使用される印刷物などに用いられる。

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