印刷の種類と印刷業界

5.付加価値を出すための特殊印刷

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経営環境、技術環境の激変に対して印刷会社の取り得る戦略の一つとして、高付加価値化で製造業本来の強みを追求することが挙げられます。

一般の印刷物は価格競争が激しく、いかに他社との差別化を図り、得意先を満足させるかが課題となっています。他社が真似できない競争力のある差別化商品により、自社の特徴を最大限にアピールできるよう、使い方のアイデア、素材、加工、サイズなどあらゆる切り口から付加価値を出すための工夫を考えてみましょう。

<その1 特殊印刷加工>

印刷物の価値を高める方法のひとつは、素材と印刷、加工を組み合わせて特殊効果を生む方法です。組み合わせ次第で多彩な表現ができ、特に見る人の五感に訴えるような特殊加工を付加すると効果的です。

顔料は印刷物の色再現に重要な役割を果たしています。

ワニスは油脂類、天然樹脂、合成樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる働きをします。

添加剤は乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する機能があります。

これらの原料は、天然物から石油化学製品に至る多種多様な物質で、用途適性に応じて使い分けられています。現在では環境に配慮した石油化学製品や、大豆油などの植物油を印刷インキの成分として利用しています。

【特殊印刷加工の製造パターン】
素材 ・フィルム
・アルミ蒸着紙
・ホログラムペーパー
・和紙、等
印刷 ・4色印刷
・特色印刷(金銀、蛍光色等)
・高精細印刷
2次印刷 ・UVニスコーティング
・スクリーン印刷
・3D印刷
・メタリック印刷
・蓄光インキ、香料インキ印刷
・エンボス印刷
加工 ・インデックス加工
・箔押し
・型抜き、穴あけ
・ミシン目入れ

◆紙以外の被印刷物への印刷

紙にはない透明性や質感があるため、用途により付加価値の高い製品になります。

従来はスクリーン印刷で金属や木材、ガラス板、セラミックタイル、アクリルボードなどに印刷されていましたが、これらの素材に印字できるプリンタもあります。

インキの速乾性が求められるため、UVインキで印刷されることが多いです。

◆曲面への印刷

一般にパッド印刷(タコ印刷・タンポ印刷ともいう)といわれており、凹版から弾力のあるシリコンに絵柄を移し、曲面の表面へ印刷するという凹版オフセット印刷です。

平版オフセット印刷機やスクリーン印刷機ではできない曲面への印刷で、ゴルフボールやキーボード・時計の文字盤・体温計の目盛りなどに使用されています。

また一方、家電製品やコントロールパネルなどの表示部分も曲面になっていることが多いです。これはインサート成形という方法で製作されていることが多いです。曲面印刷にもいろいろな方法があります。

◆布地への印刷

従来はスクリーン印刷されていましたが、最近ではプリンタでも出力されるようになっています。大型懸垂幕やTシャツへのプリントが代表的です。

◆大判プロッタ(プリンタ)

従来は一枚だけのポスターやチラシなどの出力という形でしたが、最近は出力機に対応したさまざまなマテリアルが開発されており、その形態も大きく変化してきました。例えばラッピングバスや電車・飛行機など交通機関で利用される広告、ビルの壁や量販店の床に貼られている案内板などです。それぞれ設置される場所や用途に適した素材に印刷されており、マテリアルの多様化が印刷物の付加価値を高めています。

◆3D印刷

平面の絵柄に奥行きを出し、飛び出し感を表現する手法を3D印刷(立体印刷)といいます。

立体印刷にはいろいろな手法があります。絵柄を赤・青の2色で印刷して、赤と青のフィルタを通してみると立体的にみえたり、角度を変えると虹色に変化するレインボータイプのホログラムで平面上の画像と立体画像を組み合わせたり、違う角度から撮影された2枚の写真を並べて撮影し、専用のメガネでみると完全な立体が見えるようにしています。

見せたい画像をコンピュータで画像処理してランダムなドットパターンにしたり、イラストやマークなどを一定のピッチで連続的に印刷したりすると、立体的な絵柄がみえるように特殊画像処理をしていることもあります。

用途としては、カレンダーやポスター・カタログ・雑誌などに利用されることが多く、より人目を引く目的として有効です。また、ホログラムはカードにも利用されていますが、この場合は偽造防止の目的も兼ねています。

◆感触を得られる印刷

通常、植毛印刷(フロッキー)といわれており、印刷素材にスクリーン印刷で接着剤を印刷します。そしてプラスの静電気につないだ電極板に短い繊維を置いて、これにマイナスの電極をつないだ印刷素材を近づけます。その結果、手で触ると絨毯のような感触を得られます。

用途はグリーティングカードやパッケージ装飾・高級ワッペン・コースターなどに利用されています。

◆特殊なインキ

〔熱で変化するインキ〕

熱で変化するインキには、温度によって色が変化する特性をもつ液晶をマイクロカプセルに封じ込めたインキや、熱を加えて昇華(固体が気化)させることにより昇華性の染料を転写紙に印刷したりするものがあります。

用途としては、熱源を特定することにより体温計やお風呂の温度計などで利用があります。またマグカップに感熱インキを刷り込んでおくと、お湯の温度で絵柄の色が変わります。

〔力により作用するインキ〕

隠し印刷と香り印刷があります。隠し印刷は、銀色の特殊インキでスクリーン印刷された部分をコインなどでこすると絵柄が現れるスクラッチ印刷と、セロテープなどの粘着性を利用して剥がす手法があります。

香り印刷は、香料をマイクロカプセルに封じ込め、インキに加工して印刷したもので、コインなどでこすると香りを感じることができます。

隠し印刷はゲームカードや宝くじ、キャンペーンなどに利用され、その場での即時性に

優れています。香り印刷は、シール状にして香料を透明フィルムに印刷し、剥がすと香りが出るといった販促用プレミアムや雑誌の付録、絵葉書、しおりなどに利用できます。

〔光るインキ〕

光るインキは蓄光顔料をインキ化して印刷し、明るい時に光を吸収・蓄積した光エネルギーを徐々に発散させるものや、微細なガラス粒子を混ぜたインキ・パールが反応して発色するフォトクロミック物質をマイクロカプセル化したインキなどがあります。

夜になると光るポスターや、交通安全ステッカー、学童用バッグなどに利用される他、パールインキで印刷すると光の屈折でオシャレ感をだすこともできます。また、偽造防止対策として、現在お札にも利用されています。フォトクロミックインキでの印刷は紫外線の存在を色によって確認できることも特徴であり、化粧品会社などで利用されています。

〔凹凸感を出すインキ〕

特に訴えたい部分、強調したい部分に凹凸感のあるインキで印刷すると効果があります。エッチングや彫刻刀による直彫り銅版画のようにインキの盛り上がりを強調したり、印刷面のUVインキを厚盛りにしてエンボス効果を出したり、熱硬化性の樹脂をインキ化したものを印刷し、絵柄の表面に透明な結晶状模様でひび割れ感を出すものもあります。

また隠し印刷の一つとして、マット剤の入ったメジュームインキで印刷し、鉛筆でこすると、鉛筆の粉がマットインキに付着して絵柄が現れる手法もあります。

これらは、ポスター、名刺、カレンダー、子供用玩具などに用いられています。

〔水を使って絵柄を出す〕

隠し印刷の一つとして、水を含ませたスポンジなどで絵柄にタッチして絵柄を出したり(水出し印刷)、水を塗ったり浸したりすると隠されている絵柄や文字が浮かび上がる印刷があります。子供用玩具やスピードくじに用いられます。

◆表面加工

表面加工の目的は、絵柄を保護することによって印刷物にいろいろな耐性をもたせることと、独自のデザイン性を強調することで見栄えを良くすることです。

一般的な加工として、光沢コート、プレスコート、ラミネートがあります。光沢コートは、OPニスをローラー塗装することにより、表面のツヤ出し、インキのブロッキングを防止、汚れや傷の防止などに役立ちます。

プレスコートは、印刷面をビニール引きにして100度~120度のロールで加熱加圧して冷却して光沢を出す方法です。

ラミネートはPPフィルムやPETフィルムを高温のシリンダで熱圧着させて光沢感をだします。強靭なので、本の表紙やカバーはもちろん、下敷きや飲食店のメニューなどに利用されています。

◆オフラインからインラインへ

表面加工は、印刷後オフラインで加工されることが多いですが、最近では印刷機での表面加工にも注目が集まっています。例えば、印刷表面にグロス部とエンボス部のメリハリを形成し、視覚効果に訴える手法です。

このような表現効果を出すために専用インキが各インキメーカーから発売されています。

<その2 バリアブル印刷>

デジタル印刷機の特徴は、300~1000部程度の小ロット印刷におけるコストパフォーマンスの良さです。そしてもうひとつの強力な武器がバリアブル印刷機能です。

バリアブル印刷は可変情報印刷ともいわれ、文字や画像のデータベースをもとに、印刷物を受取る相手に合わせて一点一点異なる内容を印刷する方法です。例えば、ダイレクトメールを受取る顧客の性別・誕生日・嗜好・購入履歴などから、最も効果的なメッセージや写真などを自動的に選択し印刷できます。

現在は、金融メーカーや生命保険会社の明細書などが主な需要ですが、今後データベース構築を含め、バリアブル印刷を活用した新規ビジネスの開拓が期待できます。

<その3 両面印刷機>

近年、4色同時両面印刷が可能な印刷機が登場し、導入が増えています。

両面印刷のメリットは、ズバリ時間と人件費の削減です。片面ずつの時と比べ半分の時間ででき、生産性が倍になります。経営者にとってはメリットが大きいですが、作業者は倍の作業をこなすということにもなります。

<その4 広演色性(多色プロセス)印刷>

従来の4色カラー印刷用インキ(プロセスインキ)ではどうしても再現できない色などは「特色」といって、特別なインキを使っています。しかし、写真などの画像再現は補色などが難しく、鮮やかな色彩再現ができませんでした。

そこで考えられたのが、再現領域を広げるための特別なインキの組み合わせです。

  • ・通常の4色+RGB(赤・草色・紺)を加えた7色
  • ・通常の4色+紺+橙、あるいは+緑+橙の6色

など、様々な再現方式が考案されています。デジタルカメラやコンピュータグラフィックス画像による印刷入稿が増え、見たままの再現が期待されていますが、現段階ではまだまだ課題も残っています。

<その5 高精細印刷とFM印刷>

従来型の平版オフセット印刷では、階調=濃淡の表現は網点の変化による再現方式が用いられています。しかし絵柄によってその網点が障害を起こす場合があります。モアレと呼ばれる干渉縞です。

そこでさらに網点を小さくしてしまう「高精細印刷」が考えられ、さらに網点ではなくランダムなドットの集合で濃淡再現を行うFM印刷が考案されました。

これらの方式は、モアレを防ぐだけではなく、点が小さくなることで、印刷再現の品質アップと豊かな階調再現が可能となります。

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