印刷の種類と印刷業界

2.印刷工程の基本とデジタル化

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<印刷工程の基本>

印刷とは広い意味で、原稿をレイアウト・編集し、印刷のための原版(組版・製版)・刷版を製作し、印刷を行い、さらには製本や光沢加工などに加工を施し、書籍や商業印刷物(チラシ、ポスター、パンフレットなど)の形にすることを言います。

印刷の工程は、プリプレス(印刷前工程)→プレス(印刷)→ポストプレス(印刷後工程)の三つに分類されています。

【プリプレス工程】
印刷(プレス)以前の工程を総称します。
印刷するための版を形成する工程(前工程)です。
原稿
企画・編集・デザイン
原版製作
(組版・版下・製版)
DTP・フィルム製版
スペース
【プレス工程】
印刷とは、刷版を印刷機に取り付け、紙などの被印刷物にインキを転写する複製技術(PRESS)を意味します。
代表的な印刷方式には活版印刷・オフセット印刷・グラビア印刷・孔版印刷などがあります。
刷版
印刷
(印刷方式)
1)活版印刷(凸版印刷)
2)オフセット印刷(平版印刷)
3)グラビア印刷(凹版印刷)
4)スクリーン印刷(孔版印刷)
印刷製品
5)フォーム印刷
6)シール印刷
スペース
【ポストプレス工程】
裁断・折り・光沢加工・製本など、それぞれの仕様に合わせ加工する工程(後加工)をいいます。
印刷製品
製本
(丁合い・折り・綴じ・断裁)
光沢加工
スペース
製品

<印刷工程のデジタル化>

印刷工程作業はデザイン、版下作成、製版などそれぞれの分野の専門家によって分業されていましたが、現在ではほとんどのプロセスがデジタル化されています。かつては熟練の職工によって行われていた作業を、コンピュータで行うことが可能となりました。

デジタル化にむけての印刷技術の革新について、おもに印刷前工程(プリプレス工程)の部分からみてみましょう。

【DTP】

DTPとは“Desk Top Publishing”の略で、日本語では「卓上出版」と訳されています。書籍、新聞などの編集に際して行う割り付けなどの作業をコンピュータ上で行い、プリンタで出力を行うこと、つまりパソコンを使ってデザインや印刷物を作る技術のことです。現在の印刷の主流となっており、かなりの量の印刷物がDTPで作られています。

DTPの発祥地はアメリカで、1980年代中頃にページメーカー(Adobe Pagemaker)というMacintoshのレイアウトソフトが発売されたことに始まります。アメリカでは瞬く間にDTP革命が進行しましたが、日本でDTPが本格化したのは1990年代になってからです。

パソコン上で印刷物の製作が可能になった背景は、パソコンの画面でデザインがリアルに表示できるようになったこと、さまざまなフォントが使えるようになったこと、ポストスクリプト(PostScript)という画像と文字を同時に出力するためのプログラムができたことなどが挙げられます。

DTPの代表的なアプリケーションソフトは、イラストや図版を作成するためのイラストレーター(Adobe Illustrator)、写真の色調を整えたり保存形式を変更するときに使われるフォトショップ(Adobe Photoshop)、ページをレイアウトするためのクォークエクスプレス(Quark Xpress)、インデザイン(Adobe InDesign)などが有名です。

これ以外に必要なソフトとしては、フォント(書体)でモリサワというメーカーが出しているものが多く使われています。

印刷物を作るためにはフィルムを出力する出力機(イメージセッタ)も必要です。イメージセッタが登場したのは1988年頃で、フィルムを出力してから刷版に焼き付けて印刷していました。近年ではさらに技術が進化して、フィルムを出さずに直接刷版に紙面イメージを焼き付けることが可能になりました。(CTP)

【CTP】

CTPとは“Computer to Plate”の略で、コンピュータから直接Plate(刷版)を出力するという意味です。

従来の工程では、印刷機にかける刷版を作る場合、製版フィルムを出力して、製版フィルムを刷版に焼き付けていました。DTPで版下がデジタル化されていても、製版フィルム出力は従来通り出力したフィルムを刷版に焼き付けて印刷機にかけていました。

イメージセッタ(製版フィルムを出力する機械)には、製版フィルムに網点を焼き付けるためにレーザー光線が使われていましたが、このレーザーパワーが向上して刷版まで焼けるようになり、CTPが実現しました。

一口にCTPといっても、露光光源の種類と版材によっていくつかの種類に分かれます。赤外線を用いたサーマルCTPはアルミプレートを焼き付ける場合などに用いられ、紫外線を用いたCTPは感度の高い版材に用いられ、主にポリエステルや紙をベースにした刷版に使われています。

カラー印刷を行う場合、刷版を出力する前に色校正を行い、面付けの確認を行う必要があります。そのためDDCP(Direct Digital Proofer)や大判プリンタによる面付け出力が必要となりました。DDCPとはデジタルデータからカラープルーフ(色校正)を出力する機械です。一般のカラープリンタとは違って、網点を使って階調表現をするのが特徴です。印刷業界では写真は必ず網点にするため、色調を確認するためにこのような網点を使った色校正が必要になります。面付け確認を行うための大判プリンタは主にインクジェットプリンタが用いられます。

CTPの出現により、従来の印刷のクオリティを保ちつつ、工程の省略化が可能となりました。

【フォント】

DTPで印刷物作業を行う場合、重要なソフトウェアがフォントです。フォント(書体)は明朝体やゴシック体といったように、大きく字のデザインの違いをいいます。一方、細・中・太など太さの違うものをデジタルデータ化したものも1つの「フォント」といいます。そのため、明朝体だけでも太さの違いによって数個のフォントがあることになります。

フォントのフォーマットの種類には、ポストスクリプトタイプ1フォント、トゥルータイプフォント、オープンタイプフォントといったフォーマットが存在しています。

【PDF】

PDFとは“Portable Document Format”の略で、アドビシステム社が電子書類を配布するときのフォーマットとして提唱したドキュメントフォーマットです。

そもそも、自分のパソコンでレイアウトした電子ドキュメントのデータを、他のパソコンでまったく同じに表示するにはいろいろな制約があります。

PDFではフォント、画像、色情報、さらにはレイアウトも含め、相手先のパソコンでもまったく同じように表示され、プリントアウトできるように考えられています。

PDF ファイルを表示するソフトウェアをアドビリーダー(Adobe Reader)といいます。

PDFファイルの特徴には、ファイルを軽くできるという利点もあります。印刷用に作ったデータは、時に数十メガバイトのデータ量になることがありますが、PDFファイルにすることによって約1/10#なみ#1/40くらいのデータ容量に圧縮することが可能です。

現在、アメリカや日本など世界中の行政機関や民間企業が利用しています。

【PDF/X】

PDF/Xは印刷用に適したPDFの作り方をまとめた規格で、その内容は以下の通りです。

・PDFに埋め込み(エンベット)が可能なフォントを使用する。

・使用する図版及び画像のカラースペースはCMYKおよび特色であること。

・画像(写真)は出力用の実データを使用する。

印刷会社ではデータ入稿に備えていろいろなソフトを用意していますが、すべてが用意できるとは限りません。ソフトウェア、フォントやOSの違いなどによって生じるトラブルを防ぐために開発されたのがPDF/Xです。

【XML】

XMLとは“Extensible Markup Language”の略で、文書の意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つです。マークアップ言語とは、素の文章に、文章の構造や構成要素を表す「タグ」と呼ばれる特定の文字列を入れていくことによって、文書の構造を記述する言語のことです。

文章の構造とは、例えば文書にはタイトルがあります。また章立てがあり、章の下に節がある場合もあります。章や節には見出しがあり、本文があります。こうした要素を定義して、出現する順番などをルール化することで文書の構造化がなされます。

XML文書は、XML宣言(XML文書であると宣言する決まり文句)と、文書型定義(タグを定義する)と、文書インスタンス(タグ付けされたテキスト)の三つの要素からできています。

XMLの利用法は異なるシステム間でのデータ交換やXMLデータベースなどの形で利用されています。

活用例としては、一つのXML文書にWeb用のスタイルシートを用意してインターネットで閲覧できるようにする、同じXML文書からDTPのレイアウトソフトを通して、組版して印刷物を作成する、などということもできます。

またXMLは印刷業界ではJDF(Job Definition Format)という印刷全工程をまたがる共通の指示書でも使われています。

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