2011年の包装業界

3.バイオマス・プラスチック素材の実用化

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容器包装には、成形された容器や袋状のもの、商品を覆うもの、縛るもの等の多様な種類や形態があります。そして、それぞれにいろいろな役割と機能を担っています。容器包装として現在使われているものには、紙、木材、布、ガラス、金属、陶器などがあります。
そして、容器包装の原材料として、大きなエポックメーキングを起こしたのが、合成樹脂・プラスチックでした。プラスチックは19世紀になって開発されました。
先ず、最初に開発されたのが、ポリ塩化ビニールで1835年に開発されました。そして、20世紀になって、ポリアミド(ナイロン)が開発されました。
その後、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等の合成樹脂の開発が次々と続きました。このようにして、プラスチック時代の全盛時代を迎えるようになりました。
今日では、これらの合成樹脂をフィルム化(0.25mm未満のもの)したり、シート化(0.25mm以上の厚いもの)したり、袋状に成型したりすることによって、従来の包材にはない軽くて、透明で、安い包材が開発されました。また、この包材に、ガスバリア性や水分調整性、防湿性等の高機能や多機能を付加できる包材の原材料として合成樹脂が大量に用いられるようになりました。
しかし乍ら、以上のような多くの利点とは別に、腐らないという合成樹脂の特徴は、何時までも自然界に残るということであり、廃棄時には、逆に大きな欠点になります。
廃棄時に焼却しようとすると、今度はCO2が大量に排出されて地球温暖化につながるという問題に直面します。このことは周知の事実です。
これらの問題を解決するのが、プラスチック包材のリサイクルであり、バイオマス・プラスチックの実用化であります。バイオマス・プラスチックは、生分解プラスチックとして使うこともできますが、それよりも、焼却の時におけるCO2排出削減効果の方が、より、切羽詰まった問題になっています。そこで、今から20数年前からバイオマス・プラスチックの開発や普及、更には量産化が研究され、いろいろ試行錯誤されてきました。
そして、この数年にして、ようやく、本格的な実用化時代を迎えるようになって来たのです。
バイオマス・プラスチックが本格的にテイク・オフした契機は地球博を標榜した愛知万博でした。愛知博では、サブテーマの一つとして[循環型社会]を挙げ、環境先進技術の一つとして、バイオマス・プラスチックがパビリオンの外装や内装材から、ゴミ袋までに使われました。
この愛知博でバイオマス・プラスチックの機能面や実用面が実証されたことにより、包装業界からも注目され、関心がもたれ、実際に包装資材として需要を生みだすことになったのです。
そこに追い打ちをかけたのが東京都のCO2等の温室ガス排出削減義務化でした。この温室ガス排出削減義務化に対応して、従来の合成樹脂容器から、バイオマス・プラスチックであるポリ乳酸容器に切り替えたのが全国農業協同組合連合会でした。
その全農協連合会は、その10年後の今日にはイチゴ、トマト等の容器としてポリ乳酸製容器を年間1億パックもの多くを使用するまでに至っているのです。
このようにして、いよいよ、バイオマス・プラスチックの本格実用化の時代が到来しました。
Biomassの本来の意味は「生物をエネルギー源として利用する」をいいます。例えば、イモからアルコールを得ると言ったようなことですが、バイオマス・プラスチックの種類には、植物由来化学合成系バイオマス・プラスチック、化学合成系バイオ・オレフィン、天然系バイオマス・プラスチック、それに、バイオ合成ポリマー、微生物産生バイオマス・プラスチック、更には、間伐材由来や米を原料としたバイオマス・プラスチック等が開発されています。これらのバイオマス・プラスチックは、今後共に、耐熱性や成型性等の一段の機能付加と量産化によるコスト削減によって、用途拡大も進み、ますます成長することが予想されます。

1節:植物由来化学合成系バイオマス・プラスチック

植物由来化学合成系バイオマス・プラスチックを代表するものは、トウモロコシを原料にしたポリ乳酸製品で先述した農産物や鶏卵用容器等の用途に年間1000トンに達する量が使用されています。また、食品容器等の分野でもポリ乳酸の需要が伸びています。
バイオマス・プラスチックをリードする米国のネイチャーワークスは年間14万トンの生産設備を有していますが、日本では2009年に同社の関東工場を稼働させています。原料面ではトウモロコシ以外の原料の開発や耐熱性向上、更には成形性等の研究にも盛んに取り組んでいます。また、中国・台州には2012年を目途に1万トンの体制を計画しています。

2節:化学合成系バイオ・オレフィン

ブラジルのブラスケンが成功させたサトウキビからバイオ・エタノール由来高密度オレフィンの合成プラスチックを2011年に年産20万トン規模で生産を開始しました。
日本では化粧品や食品容器での採用によって、年間5万トンの需要が見込まれています。そのため、米国のダウケミカル等でも2011年に35万トンの規模で生産を開始すると発表しています。このようにして、石油系のポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンなどの汎用樹脂が徐々に、急速にバイオマス・プラスチックに代替されていく運命にあるようです。

3節:天然系バイオマス・プラスチック

天然系ではダイセル社の酢酸セルロースが中心で、フィルムやシート等の包装分野で使われる「セルロース・ジアセテート」と、写真のフィルムに使用される「セルロース・トリアセテート」に使用されています。また、液晶表示素子表件皮膜資材用途等にも需要が拡大していて、国内で年間10万トンを超えるとも言われています。
一方、でんぷんに水を加え糊状発泡成形品が低発泡カップ・トレー用として、生分解プラスチックとブレンドして応用される用途にも広がりを見せています。

4節:バイオ合成系ポリマー

バイオ合成系ポリマーでは、ポリヒドロキシブチレンをテレス社が年産5万トン規模の生産で2009年から稼働しています。食品容器用途を中心に市場展開を行っています。

5節:微生物産生系バイオマス・プラスチック

植物由来を主原料とする微生物産生バイオマス・プラスチックでは、ポリヒドロキシアルカン酸をG5インターナショナル社(シンガポール)が開発、近く本格的に量産を開始します。日本では、G5JAPAN社が販売しています。

6節:その他、間伐材由来や古古米由来バイオマス・プラスチック

珍しいところでは、平和紙業が、間伐材由来の木材チップを可塑化してPP等の樹脂と複合化した製品や、古紙を配合した持ち帰り用食品容器を開発しています。内側にPPをラミネートすることで、耐水・耐油性も備え、電子レンジにも対応、使用後は燃やせるゴミとして廃棄もできます。日本の森林資源の健全化にも一翼を担うという製品です。
また、明治大学の研究では米や小麦粉から抽出される天然化合物「フェラル酸」を原料としたプラスチックの合成に成功しています。フェラル酸は、もともと抗酸化作用があることから食品や化粧品の添加物として利用されている物質ですが、基本物性はポリ乳酸と同質な物性を有しています。
但し、ポリ乳酸よりも、二酸化炭素等のガスバリア性が30%以上も高いという特徴がありますので、食品用包装材としての用途が期待されています。

バイオマス・プラスチック新製品情報
○帝人は、耐熱性や強度等が石油由来PETと同等の物性や品質をもつPET樹脂を構成する成分の一部をバイオマス由来に置き換えた製品を開発しました。
○大日本印刷は、PETフィルム原料の3割を占めるエチレングリコールをサトウキビ由来に置き換えることで、通常バイオを用いた包材コストは従来品の1.502.0倍を、使い方の工夫次第で、1:1にすることができるという低価格製品を開発しました。

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